はじめに
五十音表を見ると、とてもきれいに整理されていますよね。サ行は全部Sの音、タ行は全部Tの音、ハ行は全部Hの音——そう見えます。
でも、本当にそうでしょうか?
実は、五十音表には「嘘」が隠れています。ローマ字で書くと、本当の音がわかりません。この記事では、五十音表の3つの嘘を見つけます。これを知ると、自分の発音に気をつけられるようになります。
📖 この記事の内容
- 嘘その1:サ行 — 「し」はSの音じゃない
- 嘘その2:タ行 — 「ち」も「つ」もTの音じゃない
- 嘘その3:ハ行 — 「ひ」も「ふ」もHの音じゃない
- まとめ
- 関連動画
- もっと学びたい方へ
嘘その1:サ行 — 「し」はSの音じゃない
コンセプト
サ行をローマ字で書くと、Sa, Shi, Su, Se, So。
あれ? 「Shi」だけ違いますよね。
「さ」「す」「せ」「そ」は、舌の先が歯の裏あたりにいます。普通のSの音です。
でも「し」の音は、舌が少しうしろに動きます。口の天井の固いところ(硬口蓋)に近づきます。音声学(=音を研究する学問)では、Sとは別の記号 [ɕ] で書かれます。つまり、「さ」と「し」は本当に違う子音(=「あいうえお」以外の音の部分)です。
大事なことを言います。日本語の「し」は、英語の "see" の音とも違います。英語の "she" に近い、もっと柔らかい音です。
例文
- 寿司
- 「す」のS [s] と「し」の [ɕ] — 同じ単語の中に2つの違う子音が入っています
- 新幹線
- 「し」と「せ」が両方入っています。同じサ行なのに、子音が違います
- おさしみ
- 「さ」[sa] と「し」[ɕi] で舌の位置がはっきり変わるのがわかります
よくある間違い
| ❌ NG | ✅ OK | 理由 |
| 「し」を [si] で発音する | 「し」を [ɕi] で発音する | 舌が硬口蓋に近づく音。Sとは別の子音 |
| 英語の "see" のSで言う | 英語の "she" に近い柔らかい音で言う | 日本語の「し」は英語のSよりも後ろの位置 |
練習
チャレンジ: 「す」と「し」を続けてゆっくり言ってください。舌の位置が動くのがわかりますか?
「す」→ 舌は前
「し」→ 舌は少しうしろ
この違いがわかったら、サ行の嘘を見破ったことになります。
嘘その2:タ行 — 「ち」も「つ」もTの音じゃない
コンセプト
タ行にはルールを破っている音が2つあります。「ち」と「つ」。どちらもTの音ではありません。
「ち」について:
「ち」はただのTではなくて、「破擦音」と呼ばれる音です。舌が「タッ」と止まって、そのあと「シュッ」と擦れる。2つのステップを一瞬でやります。音声学では [tɕi] と書きます。サ行の「し」と同じ硬口蓋の位置で起きています。
「つ」について:
「つ」もTではありません。これも破擦音ですが、場所が違います。「ち」は硬口蓋でしたが、「つ」は歯茎(もっと前)です。音声学では [tsɯ] と書きます。「ツ」の最初に小さい「ス」がくっついている感じです。
例文
- 地図
- もし「ち」をただのTで言ったら、「ティズ」に聞こえます。破擦音の [tɕ] が必要です
- 津波
- 英語でも "tsunami" と言いますが、英語話者は最初の音で困ります。英語では普通、単語の最初にこの音の組み合わせが来ないからです
- 机
- 「ツ」は歯茎破擦音 [ts]。日常単語でこの珍しい音を毎日使っています
よくある間違い
| ❌ NG | ✅ OK | 理由 |
| 「ち」を [ti] で発音する | 「ち」を [tɕi](チ)で発音する | 破擦音。Tだけでは音が足りない |
| 「つ」を [tu] で発音する | 「つ」を [tsɯ](ツ)で発音する | 歯茎破擦音。T+Sの2ステップ |
練習
チャレンジ: 「た・ち・つ・て・と」をゆっくり言ってください。
「た」「て」「と」は舌が一回止まるだけ(破裂音)。
「ち」「つ」は舌が止まったあと、空気が擦れて出ます(破擦音)。
この「空気が擦れる感覚」がわかったら、タ行の嘘も見破れました。
ボスレベル: なぜ日本語にはティ [ti] やトゥ [tɯ] がなくて、わざわざカタカナの「ティ」「トゥ」が必要なのか——それは「ち」と「つ」が元のTの場所を使っているからです。
嘘その3:ハ行 — 「ひ」も「ふ」もHの音じゃない
コンセプト
ハ行にもルールを破っている音が2つあります。「ひ」と「ふ」。
「ふ」について:
「ふ」を発音するとき、下唇を噛んでいませんか? 噛んでいたら、それは英語のFの音です。日本語の「ふ」は違います。上の歯を使いません。両方の唇だけで、ふわっと空気を出します。
音声学では「両唇摩擦音」[ɸ] と呼ばれます。FでもHでもない、「ふ」にしかない音です。世界的にもかなり珍しい音で、この音を使う言語はそんなに多くありません。
歴史的に見ると、「ふ」はもっと昔は「パ行」の音でした。千年以上かけて今の音に変わりました(ハ行転呼)。
「ひ」について:
「ひ」も普通のHではありません。「は」「へ」「ほ」のHは、のどから空気を出す音です。でも「ひ」は舌が上がって、硬口蓋のあたりで空気が擦れます。音声学では [ç] と書きます。ドイツ語の "ich" の "ch" と同じ音です。
例文
- 富士山
- 英語の "Mount Fuji" の F は唇を噛んでいます。日本語の「ふじ」は唇だけ。歯を使いません
- 人
- 「ひ」をHの音で言うとのどの奥から息が出ます。日本語の「ひ」はもっと前。口の天井で空気が擦れます
- 冬
- ローマ字で "fuyu" と書きますが、Fは嘘です。両唇で息を出す [ɸ] が正解です
よくある間違い
| ❌ NG | ✅ OK | 理由 |
| 「ふ」を英語のF [f] で発音する(下唇を噛む) | 両唇を近づけて息を出す [ɸ] | 日本語の「ふ」は両唇摩擦音。歯は使わない |
| 「ひ」をのどのH [h] で発音する | 硬口蓋で空気を擦る [ç] | ドイツ語 "ich" の ch と同じ位置 |
練習
チャレンジ1: 下唇を噛まないで「ふ」を言ってみてください。両方の唇だけで空気を出します。できましたか? それが日本語の「ふ」です。
チャレンジ2: 「は」と「ひ」を続けて言ってください。「は」は息だけ。「ひ」は口の天井で擦れる感じがします。
まとめ
| 嘘 | 行 | 音 | ローマ字が言っていること | 本当の音 |
| 嘘その1 | サ行 | し | S の音 | [ɕ] 硬口蓋摩擦音 |
| 嘘その2 | タ行 | ち | T の音 | [tɕ] 硬口蓋破擦音 |
| 嘘その2 | タ行 | つ | T の音 | [ts] 歯茎破擦音 |
| 嘘その3 | ハ行 | ひ | H の音 | [ç] 硬口蓋摩擦音 |
| 嘘その3 | ハ行 | ふ | H / F の音 | [ɸ] 両唇摩擦音 |
ローマ字は便利ですが、本当の音を教えてくれません。五十音表の「嘘」を知っていると、自分の発音に気をつけられるようになります。
▶️ 関連動画
このトピックの詳しい解説と発音練習は動画でもチェックできます:
メインレッスン(長編):
> 💡 ヒント: 初めて見るときは、スペイン語または英語の字幕(CC)をオンにしてください。発音の説明をしっかり理解できます。
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