はじめに
やさしい版では、プレゼントの「矢印の向き」を勉強しました。あげる・もらう・くれる。モノが動く方向で、動詞が決まりましたね。
でも、日本人の会話をよく聞いてください。モノをわたす話じゃないのに、この3つの動詞が出てきます。
「田中さんが駅まで送ってくれました。」
「友だちに写真を撮ってもらいました。」
ここでは、モノは動いていません。動いているのは行為(=だれかがする「こと」)です。日本語では、行為も「あげたり・もらったり」できます。
これがレベル2です。この記事では、次の3つを勉強します。行為のやりとり、気持ちの表し方、そして敬語(=相手をたかくする、ていねいな言い方)。
「先生が教えてくださいました」まで言えるようになりましょう。
📖 この記事の内容
- モノから行為へ — て形+授受動詞
- 気持ちのルール — 「てくれる」の感謝と、「てあげる」の危険
- 敬語版と視点のルール
- まとめ
- 関連動画
- もっと練習したい方へ
1. モノから行為へ — て形+授受動詞
「授受動詞」とは
あげる・もらう・くれるの3つを、授受動詞(=「あげる/もらう」のグループの動詞)と言います。
この3つは、動詞のて形(=「書いて」「読んで」の形)のうしろにつけることができます。すると、モノじゃなくて「行為」をやりとりする意味になります。
| モノのやりとり(やさしい版) | 行為のやりとり(この記事) |
| 本を**あげました** | 読んで**あげました** |
| 本を**もらいました** | 読んで**もらいました** |
| 本を**くれました** | 読んで**くれました** |
矢印の向きのルールは、そのまま同じです。「くれる」は相手から自分へ。ここは変わりません。
〜てあげる:自分から相手へ、何かをする
わたしが、だれかのために何かをします。
- わたしは妹に本を読んであげました。
- 友だちのかばんを持ってあげました。
- マリアさんに道を教えてあげました。
助詞に気をつけてください。「〜に」だけじゃありません。
| 形 | 例 |
| 〜に 〜てあげる | 妹**に**本を読んであげた |
| 〜の 〜を 〜てあげる | 友だち**の**かばん**を**持ってあげた |
| 〜を 〜てあげる | 子ども**を**駅まで送ってあげた |
「かばんに持ってあげた」は言えません。この助詞のまちがいは、とても多いです。
〜てもらう:自分のために、してもらう
だれかが、わたしのために何かをします。わたしが「うれしい人」です。
- わたしは田中さんに写真を撮ってもらいました。
- 友だちに宿題を手伝ってもらいました。
- 先輩に日本語をチェックしてもらいました。
行為をする人には「〜に」をつけます。
〜てくれる:相手が、わたしのために何かをする
意味は「〜てもらう」とほとんど同じです。でも主語(=文の中で「〜は/〜が」になる人)がちがいます。
- 田中さんが写真を撮ってくれました。(田中さんが主語)
- わたしは田中さんに写真を撮ってもらいました。(わたしが主語)
同じ場面です。だれの目で見て話すか、それだけがちがいます。
この3つが使えない動詞もあります
いい行為のときに使う形です。だから、わるいことには使いません。
- ✗ 弟がわたしのケーキを食べてくれました。
- ✓ 弟がわたしのケーキを食べてしまいました。
「〜てくれる」を使うと、「ありがとう」の意味になってしまいます。
2. 気持ちのルール — 「てくれる」の感謝と、「てあげる」の危険
「〜てくれる」は「ありがとう」のサイン
ここが、この記事で一番大事なところです。次の2つの文をくらべてください。
- ① 友だちが手伝いました。
- ② 友だちが手伝ってくれました。
①は、ただの事実です。ニュースのような、つめたい文です。「だれかが何かをした」だけ。
②には、話し手(=話している人。ここでは「わたし」)の気持ちが入っています。「うれしかった」「ありがたかった」。この気持ちが「くれる」の中に入っています。
日本語では、自分がうれしいことをしてもらったのに「〜てくれる」を使わないと、少しつめたく聞こえます。感謝の気持ちがない人だと思われることもあります。
チャレンジ: 今日、だれかにしてもらったことを、「〜てくれました」で3つ言ってみてください。
「〜てあげる」は失礼になることがあります
「〜てくれる」はやさしい形です。でも「〜てあげる」は、気をつけないとあぶないです。
「〜てあげる」には、「わたしが親切にしてやりました」という気持ちが少し入ります。相手が目上の人(=先生や部長など、自分より上の立場の人)のとき、これは失礼になります。
- ✗ 先生、かばんを持ってあげます。
- ✓ 先生、かばんをお持ちします。
②の「お持ちします」は、けんじょうの形です(L50)。「〜てあげる」を使わないで、この形にします。
使ってもいい相手・避けたい相手
| 相手 | 「〜てあげる」 | ひとこと |
| 自分の家族・小さい子ども | ○ | 妹に読んであげた、など |
| 親しい友だち | △ | 「持つよ」「手伝うよ」のほうが自然 |
| 先生・上司・お客さん | ✗ | 「お〜します」を使う |
| 相手本人に言うとき | ✗〜△ | 「〜ましょうか」が安全 |
安全な言い方を覚えましょう。手伝いたいときは「〜ましょうか」です。
- 手伝ってあげましょうか。→ 少し上から聞こえます
- 手伝いましょうか。→ 自然でていねいです
「〜てもらう」と受身のちがい
受身(=「〜られる」の形)でも、似た場面を言えます。でも気持ちがまったくちがいます。
- ① わたしは先生に日本語を教えてもらいました。
- ② わたしは先生に日本語を教えられました。
①は「うれしい」「ありがたい」です。わたしがお願いして、先生がしてくれました。
②はちょっとへんです。日本語の受身には、「いやだった」という気持ちが入ることがあります(迷惑の受身)。②を聞くと、「教えてほしくなかったのかな」と思われます。
| 文 | 気持ち |
| 友だちに手伝って**もらいました** | ありがたい(○ 自然) |
| 友だちに手伝わ**れました** | いやだった(△ へんに聞こえる) |
| 雨に降ら**れました** | いやだった(○ 自然) |
| 弟にケーキを食べ**られました** | いやだった(○ 自然) |
ルール: うれしいときは「〜てもらう」。いやなときは受身。これで分けられます。
3. 敬語版と視点のルール
3つの敬語の形
相手が目上の人のとき、3つの動詞は形が変わります。
| 普通の形 | 敬語の形 | だれが高くなるか |
| あげる | さしあげる | 相手(自分は下がる) |
| もらう | いただく | 相手(自分は下がる) |
| くれる | くださる | 相手が高くなる |
て形につけると、こうなります。
- 先生が日本語を教えてくださいました。
- わたしは先生に日本語を教えていただきました。
- (お客さまに)道をご案内いたします。
上の2つは、同じ場面です。「くださる」は先生が主語。「いただく」はわたしが主語。やさしい版でならった「くれる/もらう」の関係と、まったく同じです。
「さしあげる」は使わないほうが安全
「〜てさしあげる」は、ほとんど使いません。理由は上と同じです。「わたしが親切にしてやりました」という気持ちが残るからです。
- △ 先生、お荷物を持ってさしあげます。
- ○ 先生、お荷物をお持ちします。
覚え方: 「くださる」と「いただく」はどんどん使う。「さしあげる」は使わない。これで大丈夫です。
視点のルール:「わたしにあげる」は言えない
日本語には、視点(=だれの目で見て話すか)のルールがあります。話し手は、いつも自分の目で世界を見ます。
だから、こうなります。
- ✓ 友だちがわたしにくれました。
- ✗ 友だちがわたしにあげました。
「あげる」は外に向かう矢印です。自分に向かってくる矢印には使えません。
もう一つ、大事なルールがあります。「くれる」の受け取り手は、いつも自分か、自分に近い人です。
- ✓ 友だちが妹にお菓子をくれました。(わたしの妹=自分に近い)
- ✗ 友だちが田中さんにお菓子をくれました。(知らない人=遠い)
- ✓ 友だちが田中さんにお菓子をあげました。
自分・家族をウチ、その外の人をソトと言います。ウチに入ってくるときだけ「くれる」が使えます。
学習者がよくまちがえるパターン
① 感謝の場面で「くれる」を落とす
- ✗ 先生が説明しました。(つめたい)
- ✓ 先生が説明してくださいました。
② 目上の人に「〜てあげる」を使う
- ✗ 部長、コピーしてあげます。
- ✓ 部長、コピーしましょうか。
③ 「〜てあげる」の助詞をまちがえる
- ✗ 友だちにかばんを持ってあげた。
- ✓ 友だちのかばんを持ってあげた。
④ うれしい場面で受身を使う
- ✗ 先輩に日本語を直されました。(いやだった、に聞こえる)
- ✓ 先輩に日本語を直してもらいました。
⑤ わるいことに「くれる」を使う
- ✗ 弟がわたしのペンをこわしてくれました。
- ✓ 弟がわたしのペンをこわしてしまいました。
まとめ
| 形 | 主語 | 矢印 | 気持ち | 敬語の形 |
| 〜てあげる | する人(自分側) | 自分 → 相手 | 少し上から。目上の人には使わない | 〜てさしあげる(ほぼ使わない) |
| 〜てもらう | してもらう人 | 相手 → 自分 | ありがたい | 〜ていただく |
| 〜てくれる | する人(相手) | 相手 → 自分 | ありがたい・感謝 | 〜てくださいました |
覚えることは、3つだけです。
- て形につけると、モノじゃなくて行為のやりとりになる。
- 「〜てくれる/〜てもらう」は感謝のサイン。どんどん使う。
- 「〜てあげる」は目上の人に使わない。「〜ましょうか」にする。
矢印の向きはレベル1と同じです。そこに「気持ち」が乗ったもの、それがレベル2です。
▶️ 関連動画
このトピックの基本は、動画でも見られます。
> 💡 ヒント: 初めて見るときは、スペイン語または英語の字幕(CC)をオンにしてください。
🎓 もっと練習したい方へ
YouTubeではルールを説明していますが、「〜てくれる」の気持ちは、会話の中でしか身につきません。
Preplyでは、実際の場面であなたが「〜てくれる」「〜ていただく」を使えるように、一緒に練習します。目上の人と話す練習もできます。
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